研究課題
19世紀半ば以降、蒸気船の定期航路の発達や、海底電信網の整備などのテクノロジーの進歩により移動する人・モノ・カネ・情報の量は増大し、アジアにおいてアヘンの密輸や海賊の横行、コレラやペストに代表される伝染病の伝播、国境を越えて広がる宗教運動や革命運動などといった問題にいかに有効に対処するのかが、国家や植民地、地域において解決すべき大きな課題となった。こういった課題に対して、国家や植民地は一体どのように対処しようとしたのであろうか。本研究は1920年代、30年代のアジアにおいて、イギリス、そしてその自治領であるオーストラリア、日本、アメリカ、中華民国が、自らの安全を脅かす政治的な革命運動に対して、(1)どのような情報をどのような政治情報機関をつかってどのように収集し、その情報を旅券管理制度や警察等による取締りに活用したのか、(2)これらの植民地や国家の間で、情報の共有や取締りをめぐってどの程度の協力関係が存在していたのかを、1919年にモスクワで設立された第3インターナショナル、通称コミンテルン(Comintern)によって主導された国際共産主義運動を対象に明らかにすることを目的とする。本年度はまずフランス、エクス・アン・プロバンスにある国立海外資料館(Archives Nationales d'outre-mer)で仏領インドシナ並びに上海の仏公界での警察活動に関する資料調査をおこなった。その結果、イギリス海峡植民地警察並びに上海工部局警察との間で情報交換をおこなっていたことが明らかになった。また、上海で活動していたコミンテルンのエージェントに関してCaroline S.HauとKasian Tejapiraの編集による、Traveling Nation-Nation-Makers : Transnational Flows and Movements in the Making of Modern Southeast Asia (National University of Singapore Press : Singapore, 2011)の中で"Living"Underground"in Shanghai : Noulens and the Shanghai Comintern Network'と題する章を執筆した。また林田敏子編の『近代ヨーロッパの探究警察』(ミネルヴァ書房、近刊)でも本研究の成果として、海峡植民地警察の活動に関する章を執筆している。
すべて 2011 2010 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Traveling Nation-Makers : Transnational Flows and Movements in the Making of Modern Southeast Asia, edited by Caroline S.Hau and Kasian Tejapira, National University of Singapore Press : Singapore
ページ: 96-125
http://www.grips.ac.jp/jp/facultyinfo/political_studies/onimaru_takeshi.html