本研究は、日本が20世紀前半に直面した経済的な地域秩序形成における在り方・役割とその展開について、台湾銀行の南進計画との関わりのなかで明らかにする。具体的には、これまで未発見であった台湾の現「台湾銀行」所蔵史料を駆使し、台湾銀行が南進という方向性を打ち出した際の将来像やグランド・デザインの形成、さらには南進戦略に対する台湾総督府・日本政府・アジア間交易を規定した英国や華僑などの認識変容、という二点に着目し、研究を進めるものである。 平成21年度には、昨年度に収集した史料の分析を実施すると同時に、ひきつづき国内の外務省外交史料館、東京大学経済学部で史料調査・収集をおこなった。また4月にかけて投稿論文一本を作成した後、アジア経済研究所の『アジア経済』に投稿し、12月には掲載可能の査読判定を得た。5月には日本財団の研究会にて、本研究構想全体についての発表を実施。7月後半からはシンガポールおよび台湾での調査旅行を実施した。まずシンガポールでは、台湾銀行や日本企業の南進に関連するイギリス植民地行政文書や新聞・雑誌などの調査を実施した。また台湾では、昨年に引き続いて台北にある「台湾銀行」経済研究室図書館が所蔵する、台湾銀行の各種史料所蔵状況を調査・確認すると同時に、滞在期間中に可能な限りの史料をデジタルカメラで撮影し、データ収集を実施した。しかしこの内容は膨大であり、作業の継続が必要となっており、平成22年度にも別途実施の予定である。9月以降は、上記作業によって収集した史料を基礎に、分析作業をおこない、平成22年度2月からは、新たな論文2本の作成を開始している。
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