研究の最終年度となる本年は、これまで蓄積してきた資料と情報を下に、研究成果のアウトプットに専念した。その結果、アメリカでの学会報告、および数冊の図書を出版することができた。本実績報告書には記載していないが、日本及び国外において研究会という形で研究報告を行う機会も多くあり、その都度、有意義なコメントをフィードバックしてもらうことができたので、今後の成果においてそれらを活かしたいと考えている。こうしたなか、一つ残念であったのが、トロント大学出版による図書の刊行が、当初の予定よりも遅れ、2013年上半期となったことである。大学出版での遅れは珍しくないことであるとはいえ、英語による成果公表はより多くの研究者に読んでもらえる機会を提供することになるため、一刻も早い刊行を願うばかりである。なお、単著という形での邦語出版の計画も順調に進んでおり、こちらも話がまとまった時点で早く着手したいと考えている。近年、インテリジェンス研究が注目を集めるようになり、学問としてメインストリームになりつつあることは非常に喜ばしいことである。その反面、インテリジェンスというのはその性質上、公開されない、すなわち秘匿とされるのが前提である。他方、学問は開かれるのが前提であり、この度の研究ではこうした性質の乖離に整合性を持たせるのに苦慮した。換言すると、政治外交史研究は基本となる一次資料による根拠の明示というのが、インテリジェンス研究では極めて困難であり、どこか類推・推測、或いは演繹的な解釈が必要となる。上述した出版物を上梓するにあたり、こうした問題に直面することになるのは明らかであるが、今後は両者のバランスを熟慮した上で、既存のインテリジェンス研究に貢献でたらと思っている。
|