本研究の目的は、1950年代イギリスにおけるポンド交換性回復計画の欧州統合との関連を探ることであった。今年は、前年度まで取り組んできたポンド交換回復計画を、イギリスの戦後の経済政策の基本理念である「ワン・ワールド」に照らし合わせ、「ワン・ワールド」の展開という観点から、一連のポンド交換性回復計画がどのような意味を持つのか、そして1955年における「事実上の」交換性回復の意味を検討した。1955年までの経緯を踏まえて考えると、一度技術的アプローチによって一国のみで交換性を達したイギリスであったが、1958年の欧州主要通貨交換性回復は交換性の最後の段階では再度ヨーロッパ協力の重要性に直面し、ヨーロッパ経済統合への歩みへのインパクトを無視できなかったことが改めて確認された。 活動面においてはグローバル化とEU・アジア研究会における報告と質疑を踏まえ、研究の方向性について振り返り、今後の方針を検討した。資料収集は、9月、2月、3月に、イングランド銀行、フランス国立国文書館、パリ政治学院歴史研究所、欧州連合歴史史料館で行った。また、欧州大学院大学ロベール・シューマンセンター所長のStefano Bartolini氏からは、史料収集に関し史料館館長との連絡他、ご協力頂いた他、研究の状況と方向性について話し合う機会をいただくことができた。
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