本年度は国内および海外での史料調査と並行して、研究成果の発表の準備を進め、その一部を口頭報告の形で発表した。国内では京都大学基礎物理学研究所所蔵の湯川秀樹文書の調査を実施した。湯川秀樹は研究対象の日本の科学者グループの指導的人物であり、同文書は本研究にとって重要な史料となる。公開準備中の史料であったが、同研究所のご厚意により、調査を行うことができた。同資料は日本グループの活動を実証的に解明することに大いに資するものである。繰り越し期間中には、Center for Scientific Archives (CSA)図書館(ロートン、イギリス)でロートブラット文書の調査を実施した。ロートブラットは研究対象のパグウォッシュ会議に創設当初から深く関与した人物である。同文書は一般公開に向けて整理中であったが、CSAのご厚意で調査が実現し、パグウォッシュ会議と日本グループの関係を実証的に解明する上で有益な史料を収集調査することができた。こうした新たに開拓された史料を利用することにより、本研究はパグウォッシュ会議や日本の科学者運動に関する歴史研究の水準を引き上げることがきるだろう。研究成果を公表するため取り組みとして、本年度は日本グループの活動を日本における核抑止の受容と抵抗という観点から考察する作業を進め、その一部は同時代史学会における口頭報告で発表した。なお、同報告を基に作成した小論が同学会のニュースレターに掲載された。また、本研究の成果を海外に発信するため、これまでの研究成果の一部を英語論文にまとめ、Association for Asian Studies (AAS)の年次大会で報告した。さらに、次年度以降、研究成果を発表するための準備として論文の作成に取り組んだ。
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