本研究は、政策や制度により生じる生産物や生産要素の相対価格の歪みが引き起こす人材の配置の歪みが、マクロ経済の生産性や効率性に対してどのような影響を与えるのかを理論的かつ数量的に分析することを目的とする。平成20年度は、分析の基本となる理論モデルの枠組みを提示し、それに沿ったモデルの構築を進めた。 今年度は、職の異質性と人材の異質性がある経済において教育投資の問題を分析したTakii and Tanaka(2007)の理論モデルを出発点とし、それに政策・制度による最終財価格の歪みを導入したモデルを構築した。さらに、労働者の生産性が不完全にしか観測されないモデルへと拡張することにより、高等教育機関の人材選抜機能(すなわち、労働者の生産性に関するシグナルの精度を高める機能)を明示的に取り入れることで、高等教育機関における人材選抜機能と政策による最終財価格の歪みとの相互作用が、人材の配置およびマクロ経済全体の産出量に対して与える影響の分析を進めた。 暫定的な結論の一つとして、政策による相対価格のゆがみが大きい場合は、高等教育機関の人材選抜昨日はむしる弱い方がマクロ生産性を高める場合があるということが得られている。
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