本研究は、政策や制度により生じる生産物や生産要素の相対価格の歪みが引き起こす人材の配置の歪みが、マクロ経済の生産性や効率性に対してどのような影響を与えるのかを理論的かつ数量的に分析することを目的とする。平成21年度は、分析の基本となる理論モデルの精緻化を行い、数量的分析を行うためのモデルへと改良を進めた。 今年度は、昨年度に引き続き、職の異質性と人材の異質性がある経済において教育投資の問題を分析したTakii and Tanaka (2007)の理論モデルをさらに精緻化するとともに、数量的分析へ向けたデータ調査および収集も合わせて行った。モデルのシミュレーションを行うために、パラメータのカリブレーションを行う必要があるが、職および人材の異質性のパラメータを求めるために必要となる企業および個人レベルのデータを収集し、今後のシミュレーション分析の基礎となるデータを作成した。 また、日本における人材配置の問題を実証的にも考察するために、学歴ごとの産業選択確率の推定および産業ごとの教育の収益率の計測を行った。現在得られている暫定的な結論としては、高学歴者は金融部門、サービス部門、および公務員部門を選択する確率が高いが、高い大卒賃金プレミアムが観測されるのはサービス部門のみであることがあげられる。
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