本研究は、規制などの産業政策や、それまでの慣行や制度の存在により生じる生産物や生産要素の相対価格の歪みが引き起こす人材の配置の歪みが、マクロ経済の生産性や効率性に対してどのような影響を与えるのかを理論的かつ数量的に分析することを目的とし、また、その実証的側面からもアプローチしてゆくものである。 今年度は、昨年度に引き続き、日本における人材配置の問題を実証的に考察することをさらに進めた。この実証分析は、現在精緻化を進めている教育制度と人材配置の問題を分析した理論モデルを用いた数量的分析を進めるうえで、重要なものとなっている。 昨年度に引き続き、学歴ごとの産業選択確率の推定および産業ごとの教育の収益率の計測を行った上で、そのような個人レベルでの産業選択の決定要因や、各産業における大学卒プレミアムの決定要因について分析を行った。その結果、高学歴者は金融部門およびサービス部門を選択する確率が高いが、高い大卒賃金プレミアムが観測されるのは主にサービス部門であると同時に、大卒者が選択する確率の比較的低い製造業においても大卒賃金プレミアムが観測されることが分かった。また、学校教育の選択をも考慮に入れた動学的最適就業選択モデルの構造パラメータの推定にも着手し、個票パネルデータを用いた構造推定にも着手し、職業形態選択についてのミクロ実証的観点からの補完も行った。 また、シミュレーションに用いる予定であるマクロ理論モデルにおいては、いくつかの仮定に関する頑健性の確認を行った。
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