本研究の目的は、産業保護や利益団体の政治的圧力の表現としての規制といった産業政策や、それまでの慣行や制度の存在により生じる生産物や生産要素の相対価格の歪みが引き起こす人材の配置の歪みが、マクロ経済全体の生産性や効率性に対してどのような影響を与えるのかを理論的かつ数量的に分析することである。 本研究課題の最終年度に当たる平成23年度は、前年度までに蓄積してきた理論および実証的知見を統合することにより、本研究課題の総括を行った。具体的には、まず人材配置とマクロ生産性の関係を記述する理論モデルのパラメータを、ミクロデータから得られた実証的事実を用いながら設定した。その上で、高等教育における人材選抜機能の度合いと、中等・初等教育における学力形成システムの関係を考察し、それぞれの段階における最適な教育システムについて考察をおこなった。 その結果、高等教育における人材選抜機能の度合に関しては、長期的なGDPを最大にする人材選抜機能が内点解として存在し、その解は生産物の相対価格のゆがみの度合いに依存して変化することが数量的に確かめられた。 研究成果のうちの一つであるOn the role of job assignment in a comparison of education systems(瀧井克也氏との共著)はCanadianJournalofEconomicsに採択され、現在印刷中となっている。
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