本研究では、不況状態における出生率と失業率の関係を内生的に捉えたモデルの構築を試みる前段階として、完全雇用下でのモデル分析をおこなった。具体的には、人口構造の変化が、財の需要構造をどのように影響を与えるかに関してモデルの構築をこころみた。そして人口構造変化が財需要から派生する労働市場に対して与える効果に関してデータを用いて統計的に分析をこころみた。 上記のモデルにおいて、養育補助金、労働所得税、養育環境に関する経済環境に関して、経済政策効果について分析をおこなった。それぞれの効果は、経済が完全雇用であるか、あるいは失業をともなう不完全雇用の状況では効果が異なることを示せた。不況状況下では、出生を促す政策である政策は労働供給を阻害するが、デフレギャップをすくなくし、消費を高めることが明らかにされた。一方、完全雇用下では、労働供給の減少が、完全雇用生産量を減少させることで、消費を減少させることが示されている。 また世代重複モデルにおいて、財が2つ存在する2部門経済モデルを構築し、このもとで、人口構造の変化と、2財間の相対価格、資本蓄積および国民総生産の関係を描写することが理論的に明らかにできた。経済の動学的振る舞いや、長期的に達成される均衡である定常状態の特徴をあきらかにした。この研究をとりまとめて、2009年度の日本経済学会春季大会(京都大学)で報告をおこない、討論者より意見をもらい、モデル改善のための修正をおこなった。
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