本研究では、不況状態における出生率と失業率の関係を内生的に捉えたモデルの構築を試みた。前段階として、完全雇用モデルにおいて、人口構造変化と、需要構造の変化による財・労働市場に対する効果に関して分析をおこなった。 完全雇用のもとにおいて、外生的な高齢化の変化による介護などのサービス財需要の高まりは、その他の財(例えば工業財など)の相対的な需要減少をもたらす。これは生産性の高める部門の労働減少をもたらし、その結果ラーニングバイドゥーイングの低下によって経済成長が阻害されることを理論的に示すことができた。そのような経済においては、出生に関わる補助を高めると、人口構造において高齢化と逆の効果を与えることから経済成長をプラスにさせることも示せた。この研究結果は雑誌Journal of Population Economicsにて発表された。 一方不況定常状態における分析としては、まず需要不足のモデルに内生的に出生率を扱えるモデルを構築して、均衡条件を確認した。またその均衡はサドル安定で均衡は一意に決定されることを示した。そのような経済のもとで、出生に影響を与える政策効果を分析した。具体的には出生補助、労働所得税、育児環境などの技術である。例えば出生補助は出生率にプラスに影響を与えるだけでなく、育児などへの時間シフトにより労働供給を引きさげることになる。しかし不況下においては、超過労働供給の状態なので、この労働供給の減少は労働市場のギャップを引き下げ、賃金減少圧力を弱め、その結果デフレの圧力も弱まることを示すことができる。またデフレ圧力の減少は経済の消費需要を高め、雇用を引き上げることを示した。この研究結果は雑誌The Japanese Economic Reviewにて発表された。
|