組織設計問題における情報収集と情報伝達に関わるインセンティブの問題について、理論的研究を行った。 理論的研究の準備のための現状調査として、経営学等の文献資料を調査し、現実の企業における情報収集や情報伝達の特色を把握した。 理論分析の面では、RadnerやVan Zandtの考え方を基礎とした組織ヒエラルキー理論のモデルに、CrawfordとSobelの考え方を基礎としたチープトークゲームの分析手法を導入して理論分析を行い、組織形態とゲームの均衡において伝達される情報の関係について考察した。この中で、組織形態間の比較のためには均衡選択の問題を扱うための適切な手法が必要であることが明らかとなり、そのための理論的基礎付けとなる研究を行った。 当該研究では、SpenceのシグナリングモデルにCrawfordとSobelによるチープトークゲームの要素を導入し、進化ゲーム理論の均衡概念を用いたモデルの分析を行った。この結果、ChoとKrepsらによる先行研究におけるIntuitive criterionを満たす均衡のうち、より有能なタイプにとって望ましい均衡が選択されることが明らかとなった。
|