組織設計問題における情報収集と情報伝達に関わるインセンティブの問題について、理論的研究を行った。 前年度に引き続き、組織ヒエラルキー理論のモデルに、CrawfordとSobelの考え方を基礎としたチープトークゲームの分析手法を導入して理論分析を行い、組織形態とゲームの均衡において伝達される情報の関係について考察した。組織形態の違いによって均衡で伝達される情報がどのように異なるかを分析するための基礎付けとして、Spenceのシグナリングモデルでの均衡選択の問題について研究した。 当該研究では、生産性の高いタイプと低いタイプの2つのタイプの労働者からなるシグナリングモデルに確率進化論の動学を導入し、以下のことが明らかとなった。第一に、生産性の高いタイプにとって分離均衡が一括均衡よりも望ましい場合には、分離均衡が長期安定的となる。第二に、選好が逆転し、一括均衡がある種のリスク支配条件を満たすときは、一括均衡が長期安定的となる。最後に、非効率的な一括均衡は長期安定的にはならない。さらに、シグナリングに加えてチープトークを含むモデルを考察し、短期安定性の観点から分析した。この場合では、生産性の高いタイプにとって一括均衡が分離均衡より望ましい場合には、リスク支配条件にかかわらず一括均衡が安定的になることが明らかになった。 前年度までの研究では、完全予見動学の理論により、均衡経路外となる情報集合がないため従来の考え方があてはまらないケースについても、リスク支配という観点から均衡選択の議論が可能になることを明らかにしたが、これが確率進化動学においても成立することが明らかとなった。
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