異時点間の選好変化が選択行動の非整合性を生むことを説明するモデルとして、Gul and Pesendorfer (2001)の誘惑と自制のモデルが近年注目を集めている。本研究ではGul and Pesendorferモデルでは説明できない人間行動に関する実験結果を説明するために、彼らのモデルを一般化することが目的である。特に、彼らのモデルでは、自制のコストが線形であることが仮定されているが、自制コストが凸関数(つまり、自制の限界費用が逓増するような関数)であると仮定すれば、アレパラドクスなどのリスク下の選択行動や、無関係な選択肢からの独立性(顕示選好の弱公理)への反例などの多くの事実を、誘惑と自制の結果として、合理的に説明できる。このような一般的モデルの公理的基礎付けとその応用について、20年度に引き続き、21年度もBoston UniversityのJawwad Noor氏と共同研究を行った。この研究の意義は、多くの結果を説明できる統一的なモデルを提供したという理論的貢献と、モデルの公理的基礎を与えたことにより、モデルの実験や実証可能性を保証し、理論のさらなる発展の基礎となるという側面にある。主な結果をまとめた論文が、経済理論の学術誌Theoretical Economicsに掲載されることが決定した。また国内外の研究会や学術会議などで関連研究の報告を行い、研究成果のアピールや、今後の研究に役立つ貴重なコメントを得ることができた。
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