研究課題
本研究は、知的財産権(IPR)保護強化が、イノベーション・経済成長そして経済厚生にどのような影響があるかを分析するもので、1、1国の閉鎖経済、2、North-South2国経済、で分析を行っている。1、2、の研究に関してそれぞれ以下のような成果を得た。1、特許をどの程度保護すべきかについて部分均衡分析では古くから多くの研究がなされてきたが、動学的一般均衡での研究はJudd(1985)によって初めてなされた。しかしそこでの結果は、「特許の保護期間を無限にしたとき(模倣を完全に規制したとき)、市場均衡は社会的最適(first best)を達成する」というものだった。このいささか直感に反する結論が何に依存し、どの程度頑健なのか、ということは現在まで分析されていなかったが、本研究では、Judd(1985)のモデルを一般化し、IPRの期待保護期間を限界的に減少させることが経済厚生にどのような影響をもたらすか分析し、Juddの結論の原因・頑健性を分析することに成功した。本年度はこの研究成果を論文として作成し、関西マクロ経済学研究会、関西学院大学、大阪市立大学などのセミナーで研究報告を行った。2、TRIPS締結以後、発展途上国でもIPR保護が強化されている。このような発展途上国でのIPR保護強化が、先進国でのイノベーションと発展途上国へ技術移転、特に海外直接投資(FDI)にどのような影響があるか、そして発展途上国の経済厚生にどのような影響があるかを分析した。結果として、発展途上国でのIPR保護強化は、先進国でのイノベーションとFDIを活性化し、発展途上国自身の厚生も改善する可能性があることを示した。本年度はこの研究成果を大阪大学のDiscussion paper(09-24)として発表した。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Canadian Journal of Economics Vol.42, 1
ページ: 300-331