本研究の目的は、金融市場の効率性と金融政策の有効性について分析することである。20年度は、(1)金融市場の効率性が低下したとき中央銀行はどのような金融政策ルールを採用すべきか、(2)日本の金融市場を非効率にする要素として、国内金融機関貸出において「横並び行動」をとっていたかどうか、を分析した。 まず、金融市場の効率性に応じた最適な金融政策ルールのあり方を理論的に分析した。分析の結果明らかになったことは、1) 金融市場の効率性の低下は家計の異時点間代替行動を妨げること、2) その結果、中央銀行の利子率コントロールは金融市場の効率性が低下するにつれて経済に限定的な効果しかもたなくなること、3) 結論として、経済安定のために望ましい金融政策ルールのあり方は金融市場の効率性に大きく依存すること、を明らかにした。この成果は、現在、草稿段階にあり、21年度以降、国内・国際経済学会および学術雑誌において随時発表する予定である。 もう一つの研究として、国内金融機関の貸出データを用いて国内金融機関が横並び行動をとっていたかどうかを実証的に分析した。そして、日本の金融市場が横並び行動によって非効率になっていたかどうかを分析した。その結果、1) 中小金融機関(地方銀行、信用金庫など)の貸出行動において横並び行動が強かったこと、2) 金融機関の横並び行動は非効率な資金配分をもたらし、経済攪乱的に働いたこと、が明らかとなった。この成果は、20年度の国内・国際学会および学術雑誌において発表することができた。
|