平成20年5月の日本西洋史学会第58回大会(島根大学)と、10月の近世イギリス史研究会第17回例会(大阪大学)における個別研究報告をもとに、トーマス・ヘップバーンの著書『オークニー諸島の貧困』(1760年)の背景にあった「パンドラー訴訟」についての国内外初の研究論文を執筆した。「パンドラー訴訟」や、それを論じた『オークニー諸島の貧困』が、離島のオークニー諸島にありながらも、「改良」の推進など、スコットランド啓蒙の思想運動の実践であった一側面を明らかにすることができた。夏季の7月から9月には、英国スコットランドのエディンバラ大学、およびオークニー諸島の図書館や文書館へ赴いて多くの資料を収集・分析し、論文の執筆に活用することができた。また著書『物語経済史』(ふくろう出版)でも、研究成果の一端を反映させることができた。「パンドラー訴訟」についての論文は、平成21年度中に完成させ、『西洋史学』への出版を目指す。 並行して平成21年3月の経済学史研究会第195回例会(関西学院大学)での個別研究報告をもとに、『オークニー諸島の貧困』についての国内外初の研究論文を執筆した。スコットランド教会の穏健派に属したトーマス・ヘップバーンの『オークニー諸島の貧困』を当時の文脈に位置づけることで、穏健派の経済思想が従来論じられてきたよりも多様な問題関心と射程を持っていたことを指摘することができた。本研究の課題である「スコットランド啓蒙の経済思想の歴史的背景と特質」を明らかにする上で、出発点となる論点の一つである。平成21年5月の日本経済学史学会第73回大会(慶應義塾大学)において、さらに個別研究報告を行った上で論文を完成させ、『経済学史研究』への出版を目指す。
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