東京と大阪の都心ビジネス回復がおこっている。すなわち、人口の増大が郊外で起こっているのではなく、都心で進んでいるという、いわゆる「都心回帰」の現象が起こっている。実際、日本において都心回帰と集積のメリットを実証している学術的な研究は少ない。都心回帰については、統計指標に基づく検証、あるいは一般の不動産業界から発表されているマンション販売状況の指標などにとどまり、また集積の経済の実証は、製造業に関する研究はいくつかみられるが、東京や大阪といったホワイトカラー労働者を多数雇用する都心部における企業についての集積の経済を実証したものは非常に少ない。 そこで、最初にデータベースを作成した。主要な作業は、地域の空間情報、用途地域の過去の地図データのデジタル化、インフラの整備状況、外部経済を及ぼす可能性のある建物の立地状況、実際の容積率、どの企業がどこに立地しているのかといった情報をミクロレベルでデジタル化し、公示地価や住宅価格のデータとマッチングさせた。さらに本研究では、工業(場)等制限法が制定され始めた1959年頃から、東京の用途地域の変遷を追うことにより、東京の衰退した面、代わりに発展してきた面を、集積の経済という観点から定量化する。そのために、用途地域の変遷を、紙ベースの地図からデジタル化した。そして、それらを国土地理院の標準地図に重ね合わせることにより、用途地域の変遷を地域ごとの空間データとして作成した。これらは、まだデジタル化されていることが少ない貴重なデータベースとなる。
|