研究概要 |
本研究の目的は、国際間の所得不平等問題が生じる原因を習慣形成に求める理論的枠組みを構築することにある。このため交付申請書のとおり海外の学会((International Institute of Public Finance)や国内トップレベルの学会(日本経済学会、IEFS JAPAN)へ参加し、実証研究のサーベイや最新の研究成果の確認を行った。 国際間所得不平等問題は、経済成長論の研究において中心的課題の一つであり、発展途上国にとっては切実な問題である。本研究では、当初、新古典派経済成長論の枠組みで習慣形成を通じて各国の生産構造の変化が所得不平等をもたらすというメカニズムを明らかにすることを目的としていたが、上記の学会参加や最新の研究成果の分析から、土台となる経済成長モデルを新古典派成長論に絞ることを避け、より一般的な視点でこの理論モデルを構築することがより望ましいとの知見を得た。これは近年、経済成長論が定常状態に至る移行過程を重視していること、実証研究がこの移行過程を対象範囲としていることによる。当初想定していた新古典派経済成長モデルは、資本ストックの推移を考慮したものとなっているが、近年の経済成長論が内生的経済成長理論と新古典派成長理論を歴史と整合的にさせることを目的に議論が進んでいるため, 必ずしも資本ストックの推移のみが経済成長のエンジンとはなりえない。これを踏まえて、より一般的にモデル化することでいくつかの簡単化が可能であり、移行過程の分析を行うことが可能になる。
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