研究概要 |
本研究は,習慣形成が国家間の所得格差に与える影響を,世代重複モデルを用いて,理論的に明らかにするものであり,本年度は,昨年度において蓄積したサーベイを理論的研究に反映させ,2年間の研究を完結させることに努めてきた。 その成果として,国際間の資本移動と習慣形成の関係について論じた"国際間資本移動による利益と習慣形成"および貿易公的中間財の関係から国家間の所得格差の問題を議論した"International Trade and a Public Intermediate Goods in an Overlapping Generations Model"(ともに投稿準備中)に結実した。前者は,世代重複構造を持つ家計に,(1)親から与えられる消費水準に基づく消費習慣と(2)自分の若年期の消費水準が老年期の消費水準に影響するという消費習慣が,共存する際に,資本移動のパターンおよび厚生への影響を見たものであり,分析の結果,上記二つの習慣形成の影響の大きさに基づいて,"様々な"資本移動のパターンが生じることが確認された。後者の研究は,世代重複経済に,公的中間財を入れた場合に貿易パターンにどのような影響が生じるかを明らかにしたものであり,公的中間財の影響が,資本蓄積を通じて需要側に影響を与えるという新たな効果を生むことが確認された。これらの結果は,海外の学会(The Pacific Regional Science Conference, Far Eastern and South Asian Meeting of the Econometric Society)において報告され多くの有益なコメントを得ることができた。 これら構築した理論モデルをさらに近年の成長モデルの土台に移して,より現実に近い理論モデルの構築を行い研究成果をより高めたいと考えている。
|