米国のNational Longitudinal Survey of Youth 1979(NLSY79)を用いて、労働者の観察されにくい能力を雇用企業が習得しているか、また、労働者に関する情報は労働者が転職した際に外部企業に伝達されているか実証分析した。男性労働者を3つのサンプルに分けた:自発的に転職、非自発的に転職、同じ企業内に留まる。白人の場合、自発的に転職した労働者の(観測される能力である)学歴が賃金に与える影響は有意に正だが、(外部企業に観測されにくい能力である)AFQTの点数が賃金に与える影響はゼロに近い値をとる。一方、黒人の場合、学歴とAFQTの点数がともに賃金に有意に正の影響を与える。非自発的に離職した労働者の場合、白人・黒人ともに、学歴とAFQTの点数が賃金に与える効果は非有意で小さな値をとる。以上の結果より、よりよい仕事に転職する場合、白人・黒人ともに、転職先の企業は労働者を観察される能力(学歴)で評価する。しかし、黒人の場合、比較的能力の高い労働者が自発的によりよい仕事に転職している。 同じ企業に留まる労働者の場合、白人・黒人ともに、学歴が賃金に与える影響は労働経験年数とともに増加する。黒人のAFQTの点数が賃金に与える効果は、白人よりも小さく、黒人は職業訓練を受けることにより賃金が増加する。以上の結果は、黒人は同じ企業内で白人と同等に評価されないため、有能な黒人が自発的に転職している可能性を示唆している。
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