平成23年度は、以下のような研究成果を得た。(1)前年度に実施したアンケートのデータを用いた日本型人事制度への支持に関する実証分析を国際学会にて報告した。得られたコメントに基づいて論文を改訂し、現在投稿準備中である。(2)昨年学会で報告した「成果主義と企業業績」の改訂作業を行った。成果主義が企業業績に与える影響について、労使協議制度や労働組合が存在することで変化があるのかを分析しており、こちらも現在投稿準備中である。(3)共同論文「何が成果主義賃金制度の導入を決めるか」(『日本の企業統治』に収録)を執筆した。これは、労働インセンティブに大きな影響を与える成果主義の導入要因について、企業統治のあり方に着目しながら分析したものである。 これらの研究成果に加え、ここまでの研究の集大成として、2010年度に行った従業員向けアンケートに加えて追加的なアンケートを実施した。これは、労働者の内発的動機付けと外発的動機付けのどちらが、より仕事満足度や幸福度に与えるウェイトが高いのかや、クラウディングアウトが存在するかどうかについてより深く検証し、そしてそれらの労働生産性への影響の検証を行うためのものである。特に、労働供給への非金銭的なインセンティブに注目し、労働供給に対して、非金銭的なインセンティブがどれぐらいの重要性を占めるのか、昇進可能性を含む金銭的インセンティブが、非金銭的インセンティブをクラウディングアウトするのか、その影響の大きさはどの程度か、などについて分析しており、論文を執筆中である。平成24年度中の学会報告と投稿を目指している。
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