研究概要 |
本研究は, 労働市場における大学院教育の効果を経済学的に測定し, 大学院改革政策の評価と今後の指針の礎を築くことを目的としている。特に, これまでの教育(学歴)効果の研究においては, 労働供給側のデータが利用されることが多く, わずかながらに存在する大学院教育効果の研究についても例外ではない。そこで本研究は, 労働需要側の側面, すなわち経営側の意思とその反映である処遇からこの課題を解明することを試みる。 平成20年度においては, 教育効果に関する理論的・実証的先行研究の整理, 調査仮説の設定, 調査票の作成の3つの事項を実施した。第1の先行研究の整理において, 労働需要側から大学院教育のあり方を探った研究が社会人大学院の実態調査というかたちでいくつの先行研究が存在していた。学卒後すぐに大学院に進学した者だけでなく社会人大学院生を含めたかたちで研究を進める必要があり, この点について研究協力者と関連する研究を進め, 学会発表・論文の投稿を行った。 第2の調査仮説については, 賃金センサス等のマクロ統計データから大学院卒の6つの賃金カーブ, すなわち, (1) 初任給が勤続2年の学部卒よりも高く, その後の上昇率も学部卒より高い。(2) 初任給は勤続2年の学部卒より高いが, その後の上昇率は学部卒と同じ。(3) 初任給は勤続2年の学部卒と同じだが, その後の上昇率は学部卒より高い。(4) 初任給が勤続2年の学部卒と同じで, その後の上昇率も学部卒と同じ。(5) 初任給は勤続2年の学部卒より低いが, その後の上昇率は学部卒より高い。(6) 初任給が勤続2年の学部卒より低く, その後の上昇率も学部卒と同じ, を作成した。 その後, 調査仮説を検証できる調査票, すなわち, 賃金カーブの切片の高さと傾きを明らかにできる人事アンケート調査の調査票を作成した。平成21年度に郵送アンケート調査を実施する。
|