研究2年目となる2009年度は、教育の動学的な意思決定を記述なる理論的枠組みの構築および各種実証分析を行うとともに、研究成果の一部は学術論文としてまとめ専門誌に投稿した。 理論モデルの構築に関しては、各個人がそれまでの教育成果を前提として、自身の適性や能力に関する期待値を条件付きでアップデートし、効用を最大化するよう教育に関する意思決定を各期に行う動学的理論モデルの構築に努めた。そこでは、早い段階での専門化(もしくは才能の選抜)は(最終的な教育成果が不確実であるがゆえに)個人を過度なリスクにさらす一方で、専門化を遅らせることは、非効率な教育につながる。こうしたトレードオフに直面した状況で、専門化を行うタイミングからでびにその選抜基準に関して望ましい教育システムのめり方を理論・実証両面から検証することを目指している。 一方で実証面では、ヨーロッパ主要国の教育関連データを用いて、各国の教育システムデザインの相違について検証した。そこには明確な効率性と公平性のトレードオフが存在し、公平性を重んじる国家ほど、専門化のタイミングを遅らせる傾向があることを指摘した。この研究は学術論文としてまとめ、海外専門誌にて公刊される運びとなった。
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