研究概要 |
平成21年度は,人口の高齢化に関するRed Herring仮説について具体的な実証結果を得ることを目標に研究に取り組んだ.年度末には,研究計画全体のなかで重要な位置づけを占める研究論文「医療支出と高齢化に関するRed Herring仮説の検討-マクロデータによるアプローチ」を完成させた.本論文は,本研究が注目するRed Herring仮説をめぐって多角的に実証分析を行い,さらに医療費高騰に密接に関係すると思われる医療技術の進歩・普及や医療制度の違いをも射程に入れた包括的な研究である.この成果は平成22年度中に学術紀要『東北学院大学経済学論集』に発表予定である.ここでの分析結果からは,ミクロデータを用いたいくつかの実証分析で指摘されている医療費高騰への高齢化主因説がred herringだとする見解は,少なくともマクロの観点からは支持されないことが明らかとなった.このことは医療政策,なかんずく高齢者医療政策の制度設計を行っていく上で非常に重要な知見と思われる.この論文を基礎として,現在さらに論点を絞り込んだRed Herring仮説にまつわる二本の研究論文(和文と英文)の執筆を企図している.推定作業は大方終了しているが,これらを実際に論文へと昇華させていくことが次年度(平成22年度)における研究の中核を形成することになる,次年度は本課題研究期間の最終年度となるため,これまでの全体的な総括も行いながら研究を進めていきたいと考えている. なお,本年度も,研究課題と密接に関連する「治療技術環境の進歩と進行非小細胞肺癌患者の予後についての実証研究」を精緻化させる作業に取り組んだことを付記しておく.
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