本年度は、主に以下の研究を行った。 1. 市場規模が異なる2地域への立地の非効率性および経済厚生 予備的研究として、サービス産業における、市場規模が異なる2地域への企業立地の非効率性・経済厚生に対する効果に関する論文を作成した。寡占の状態にあるサービス産業における企業立地は、経済厚生の観点から非効率となることがわかった。特に、市場規模の大きい地域には、消費者の観点からは過少、生産者・経済全体の観点からは過剰に立地している。また、サービス産業の特徴から、市場規模格差の拡大は、すべての生産者にとって(規模が大きいほうの生産者にとっても)望ましくならないことを明らかにした。本研究成果は、海外査読誌に掲載の予定である。 2. 費用が異なる2産業(地域)への参入非効率性 2つの産業に固有の限界費用・固定費用が異なる状況における、各産業への参入企業数の非効率性および参入の経済厚生に対する効果に関する分析を行った。2産業間の固定費用水準の格差によって、低い限界費用を持つ産業においても参入企業数が経済厚生を最大化する企業数よりも過少となる可能性を明らかにした。この分析において、「産業」の部分を「地域」あるいは「国」に置き換えることにより、費用が異なる2地域への立地企業数あるいは海外直接投資企業数の非効率性について説明することができる。本研究成果については、ワークショップで報告し(裏面11)、海外学術雑誌への投稿に向け改訂中である。
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