近年、日本やEUなどの先進諸国において使用済みとなった製品の処分をめぐる議論が様々な物議を引き起こしている。天然資源の利用、環境汚染、そして、経済性を総合的に配慮した際に、現在の制度は十分だといえるのであろうか。天然資源の持続可能な利用、自然環境の保全、そして、より豊かな人間の経済生活、これらの総合的なバランスがとれた社会の実現を目指す上で、もし何らかの弊害があるとすれば、解決のためにはどのような政策が考えられるのであろうか。この研究では、このような課題に対する経済学的分析を通じて政策的インプリケーションを導くことを目指している。 平成20年度においては、これまでの環境問題の経済分析において中心的に用いてきた動学ゲーム理論というフレームワークに国際貿易の要素を取り入れる上で、本や論文を利用することに加え、学内・学外の研究者との学術的な交流を深めていくことにも力を注いだ。とりわけ、米国のポートランド州立大学の長瀬洋子氏との共同研究を開始したことにより、さらにリサイクルと廃棄物の経済分析についての研究内容の幅が拡がったと認識している。現在も共同論文を継続して執筆中であるが、その成果は徐々に公刊されつつある。また、2008年10月にはカナダ・トロントにおいて行われた「Canadian Resource and Environmental Econolnics Study Group」の第18回年次大会、2009年3月には台湾・台北において開かれた「第4回東アジア環境・資源経済学シンポジウム」に参加し、論文を報告するとともに、討論者としてもリサイクル問題などを中心とした環境経済学の諸テーマに関して発言する機会を得た。今後も積極的に国内外の学会・研究セミナーで報告することを通じて、自らの研究内容をさらに深いものとしていきたい。
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