まず、山口三十四教授(尾道大学)と人口変化と資本蓄積および産業構造の変化について共同研究し、学術誌に論文を投稿し、掲載された。この研究では、人口変化、特に二つの人口ボーナス(第一の入口ボーナス : 出生率の低下による若年人口の低下、第二の入口ボーナス : 寿命の伸びによる貯蓄の上昇)は資本蓄積を増加させ、それが一国の産業構造、特に農業の重要性に大きな影響を与えることを見出した。これを展開させ、資本蓄積だけでなく人口総数や労働者数を考慮し、人口変化の農業の重要性や一人当たり所得に対する効果について日本のデータを用いてシミュレーション分析を行い、論文を作成中である。ここでも人口ボーナスの資本蓄積に対する効果やそれが農業の重要性に与えた貢献は非常に大きいことが確認された。 また、Andrew Mason教授(ハワイ大学)と、二つの人口ボーナスの貯蓄に対する効果についてクロスカントリーデータを用いて計量的に分析し、学術誌に投稿し掲載された。ここで、寿命は国民貯蓄率に重要な影響を及ぼすことが見出され、第二の人口ボーナスは貯蓄において非常に重要であると結論付けた。これを発展させ、Mason教授が作成した二つの人口ボーナスのデータを用いて二つの人口ボーナスの貯蓄率および経済成長に対する貢献について、計量的に分析を行い、査読付学術誌に投稿中である。 さらに、黄〓(元神戸大学大学院経済学研究科博士後期過程)・山口三十四教授と共に、中国における人的資本(特に教育)と経済・社会の相互依存関係について計量的に研究し、学術誌に掲載した。この研究で、中国における現在の大学卒業者の全人口に占める割合は一人当たり所得に正の相関があることや、母親の人的資本の蓄積は現在の若い世代の人的資本形成に重要な正の影響を及ぼすことが示された。また、母親の人的資本の蓄積が大きいほど、少年犯罪率が低くなる傾向があることも見出された。
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