まず、山口三十四教授(神戸大学)と、2008年に人口学研究に掲載された論文を展開し、2つの人口ボーナス(第一の人口ボーナス:出生率の低下による若年人口の低下、第二の人口ボーナス:寿命の伸びによる貯蓄の上昇)、人口減少の農業への影響について論文を作成し、米国の学会で発表した。その論文を学会誌に投稿し、現在審査中である。ここでは、筆者の世代重複モデルと山口教授の一般均衡的成長会計分析モデルを組み合わせ、成人と幼児の生存率、子供の数、総人口、総労働の変化を考慮し、日本の人口変化が農業・非農業のインプット・アウトプットにどのような影響を及ぼすのか分析を行った。その結果、人口変化は、戦後から20世紀末までは、非農業に有利に作用してきたが、今後は、農業の重要性を高める可能性があることが示唆された。この論文で、人口ボーナスの力も重要であるが、労働人口がより大きな力を持つことが示された。 また、岡田修一研究員(神戸大学)と山口三十四教授とともに、地方自治体(兵庫県市町村・都道府県)の人口要因について計量分析を行い、論文を作成し、学術誌に掲載した。分析結果より、住環境は、居住地選択に大きな影響をあることが見出された。この研究は、今後地域の人口の決定要因、また、人口の経済の影響を考える上で重要である。 さらに、中国の姚万軍副教授(南開大学)を神戸大学に招聘し、人口と経済について研究打ち合わせをした。特に、中国では、現在、急速に経済が発展しているが、今後の少子高齢化は非常に不安な要素である。その中で、第二の人口ボーナスの価値を認識し、今後も継続した成長を目指すことは重要であると思われる。そこで、共同研究について話し合い、中国の経済成長の決定要因について、人口ボーナス・脅威を中心とする人的資本形成を考慮に入れ、計量的に分析することにした。現在、論文作成に向けて、資料を収集している段階である。
|