まず、二つの人口ボーナス(第一の人口ボーナス:人口転換の過程で、生産年齢人口の割合が増加すること、第二の人口ボーナス:成人寿命が延びることにより、貯蓄が増加すること)の一人当たり所得の成長率や貯蓄率に対する影響について、世界のクロス・カントリーデータを用いて、計量的に分析を行った。そこで、二つの人口ボーナスは、欧米諸国・日本・韓国・台湾等の先進諸国のサンプルでは、国民貯蓄率や一人当たり所得の成長率に正の影響を及ぼすことが見出された。この研究の重要性として、人口ボーナスは、ポテンシャルであり、人口ボーナスの状態であるからといって、必ずしも経済成長や貯蓄に好影響をもたらすとはいえないが、計量分析により、一定の効果があることが確認されたことである。この研究をまとめ上げ、本の一章にする予定である。 また、中国の時系列データを用い、中国の人口諸変数の一人当たり所得に対する影響を計量的に分析し、第一の人口ボーナスの一人当たり所得に対する、正の貢献を見出した。さらに、タイのタイムシリーズ・データを用い、人的資本の経済成長への効果を計測した。ここで、人的資本は、人口一人当たり教師の数、政府の教育支出で計測し、教育の重要性が強調された。一つの国に焦点を当てて、人口ボーナスや教育の効果のマクロ経済的な影響について、計量的に分析を行った研究は、これまで、あまり多くなされていなかったため、重要なものである。中国に関する論文は、既にまとめ上げ、査読付き雑誌に投稿し、現在、審査の段階である。 さらに、研究の過程で、人口の経済への関係を考える際、農業の役割を無視して考えられないということに、痛感させられていた。人口の農業に対する効果についての論文を、学術誌に投稿する予定である。また、中国畜産物生産成長について、論文を執筆したが、今後、人口の影響も考慮して、さらなる研究を進めていきたい。
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