研究概要 |
本研究は,地域政策の評価分析のための経済地理モデルの構築を目的としているが,第二年度である平成21年度は都市構造が地域経済に与える影響の分析,地域経済と国際経済の統合モデルの構築,を中心に行い,以下を明らかにした. 1. 新経済地理のフレームワークを用いて,都市内商業販売額の構造方程式を演繹し,その推定を試みた.それはこれまで経験的に用いられてきたハフモデルに,ミクロ経済学的な基礎を与えたものであると考えることができる.推定されたパラメータは,概ね期待通りの符号・大きさであった. 2. 1で推定されたパラメータを用いて,都市内交通の改善がもたらす影響とコンパクトシティ政策(都市開発規制)の影響に関して,岡山市を対象としてシミュレーション分析を実施した.前者においては,より郊外の事業所ほど販売額を大きく伸ばし,都心部の事業所ほど販売額を減少させることが示された.後者においては,例えば,郊外部の人口と事業所をともに1割程度都心部にシフトさせると,都心部の事業所においては約3.4%販売額が増加し郊外部の事業所においては約2%販売額が減少することが示された. 3. 初年度に構築した一国二地域の基本モデルを,国際経済を含む二国四地域の国際地域モデルに拡張した.ここでは,生産要素(労働・資本)は国際間を移動しない仮定のもとに分析を行った。その結果,国際間で財が交易されている状況下においては,交易費用がどのような値であってもいわゆる「自国市場効果」(大国に企業がより集積する現象)が生じることが理論的に明らかになった. 以上の内容は,これまでの新経済地理・空間経済学の研究において,明らかにされていなかった,あるいは取り組まれてこなかったものであり,都市・地域政策において重要な意義を持つと考えることができる.
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