日本における規制改革の議論は、先行する欧米諸国における経験、あるいは理論的・実証的な研究に依拠する場合が多く、それらが日本の経済構造や市場構造にも応用可能であるかどうかについては検討の余地がある。とりわけ日本の公益事業については、これまで需要は価格には反応しない、すなわち需要の価格弾力性はゼロまたは極めて小さいという先験的な仮定が定着し、市場構造に関する学術的な分析がほとんど行なわれてこなかった。 本研究は、電気・ガスなどの日本の代表的な公益事業について、日本特有の経済構造やその地域間差異を考慮しながら、市場構造を表すパラメータを計量経済学的な手法により導出することを試みるものであり、それにより規制改革の運用方法や自由化・規制緩和の範囲などを具体的に考察するシミュレーション分析において必要不可欠な基礎的データを提供することを目的としている。 今年度は、引き続きガス事業について、統計データの集計が歴年から年度に切り替わる平成17年度以降についても推定期間に加える作業を中心に、推定結果の改善を試みた。現時点では、ガス需要の価格弾力性は0.02(東京)~1.13(北陸)で、これまでよりもさらに地域的な差異が大きく、特に東京、中部、関西の都市部では0.02~0.03と極めて小さいとの推定結果が得られている。しかしながら、推定自体に大いに改良の余地が残されているなど、まだまだ克服すべき課題は多く、そうした問題に対処していくのが最終年度である来年度の課題である。
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