研究概要 |
日本における規制改革の議論は、先行する欧米諸国における経験、あるいは理論的・実証的な研究に依拠する場合が多く、それらが日本の経済構造や市場構造にも応用可能であるかどうかについては検討の余地がある。とりわけ日本の公益事業については、これまで需要は価格には反応しない、すなわち需要の価格弾力性はゼロまたは極めて小さいという先験的な仮定が定着し、市場構造に関する学術的な分析がほとんど行なわれてこなかった。 本研究は、電気・ガスなどの日本の代表的な公益事業について、日本特有の経済構造やその地域間差異を考慮しながら、市場構造を表すパラメータを計量経済学的な手法により導出することを試みるものであり、それにより規制改革の運用方法や自由化・規制緩和の範囲などを具体的に考察するシミュレーション分析において必要不可欠な基礎的データを提供することを目的としている。 最終年度となる平成23年度は、引き続きガス事業についての推定結果の点検・改良を試みた。その結果、短期の価格弾力性は0.32(北海道)~0.90(北陸)で,これまでの推定結果よりも地域的な差異が小さくなり,特に,極端に小さな値であった東京、中部、関西の都市部でも0.36~0.67という平均的な値となった。その一方で,長期の価格弾力性は,1.24(九州)~11.42(四国)と極めて地域的な差異が大きくなった。ただし,その内訳は,東北・中部・四国が6.9以上の高い値であるのに対して,他の6地域は2.5以下に収まっており,これら3地域は個別に特殊な要因があるかどうかを検証する必要があろう。
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