本年度は、研究計画の初年度に該当するため、これまでの先行研究のレビュー、自身の研究成果の再評価を進めた。また、調査対象企業に対する観察、聞き取り調査を現地にて推進し、今後の調査協力を取り付けるとともに、調査体制、方法などのデザインを明確にした。調査対象企業においては、仮説に沿ってモノづくり能力の構築が展開されており、特に新製品開発に向けた活動では、現地エンジニアが要素研究を通じて経験蓄積を重ねる中で、製品開発に必要な能力を高めていっている様子を確認できた。また各社の開発部署においても、マネジメント能力の向上のために情報管理の整備などが進められていることがわかった。 本研究では、タイ国自動車産業の領域が拡大していく中で、QCD、製品開発といった個別要素ではなく、「ものづくり」という単位での総合的な能力構築が重要になっており、特にタイ系部品メーカがどのようにそれを推進していくのかが重要なテーマとして設定されている。この点を念頭にものづくり能力の構成要素、現地での具体的取り組みについて考察している。能力の構成要素という点では、大きく分類して、テスティング、サンプリング、研究、図面作成、マネジメントという枠組みを設定しているが、今年度は、新製品の立ち上げ段階におけるカストマーとのコミュニケーションというところに的を絞って調査したところ、顧客要求を満たそうとする過程でドキュメンテーション能力が向上しており、上記のマネジメント側面の要素が高まりやすいことがわかった。
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