本研究は、時代の要請に応じて生産のみならず製品開発にまで役割を拡大しようとしているタイ国自動軍産業について、「ものづくり能力」という観点からの製品開発能力の構築について考察しているものである。 製品開発能力については、これまで主にエンジニアリング能力の構築という観点からの考察が多かったが、本研究では、マネジメント能力にまで領域を拡大し、より総合的な能力の構築について検討しているところが特徴である。 本研究の成果としては、ものづくり能力の定義の設定、構成要素の抽出、能力構築過程の検証、であるが、これらは様々な能力構築段階にあるタイ系企業に対する聞き取り調査・観察によって導き出された。そのうち、現在新製品の開発に取り組んでいるタイ系部品メーカでは、実験段階での試行錯誤が能力構築につながっていることが分かったが、それを蓄積するシステムが皆無であり、やはりマネジメント側面の強化が重要であることが示唆された。ところが、この点についての理解が浸透せず、補強が困難であったことから、能力構築メカニズムのみならず、移転手法についての検討も重要であるといりことが示唆された。また、日系企業との取引が多く、組織運営のノウハウもあるタイ系部品メーカでは、外部からの人材獲得によってあっさりと能力構築をなしえたが、この手法で組織に能力が根付いていくのかは疑問である。 今後、この成果をもとに能力構築過程をより精密に解明し、途上国におけるものづくり能力構築支援における日本型技術移転の適応についての議論に結び付けていきたい。
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