まず、先行研究の整理を実施。主たる分野はマクロ経済学と経済史であるが、近年、戦前日本の経済成長に関して、所得税データを用いてこれを府県別GDPの代理変数み見なして実証分析を行う研究がすすみつあることが判明(将来的にこれら研究の成果が得られ次第、情報交換のためのディスカッションを検討している)。しかしながら、人的資本と金融発展とによる成長の相互作用のメカニズムを解明するという視点まで広げたものは無く、研究自体の先進性は損なわれていないものと判断された. 徳川政権下の教育水準について従来の議論(徳州政権末期において相当程度の識字率をマークするほどに教育水準が高かったとする説)を疑問視する研究に恵まれ、あらためて明治維新以降の教育制度の整備と成長との関係性を探ることにそれなりの意義がやはりあることが再確認された.その上で、日清戦争後の義務教育に関する制度整備やナショナリズムの刺激を軸として教育史のパースペクティブを描くという方針を固める。また、金融システムについては、日露戦争前後の時期に名望家を軸とするコーポレート・ガバナンスの形態がほぼ完成されたという理解がほぼ頑健であるという整理ができたので、明治維新から日露戦争までの30年近くの期間、さらに日露戦争から第2次大戦までの30年近くの期間という2つの時期に区分する重要性とともに先述の教育史の捉え方をも鑑み、明治維新から日清日露、そして日露戦争から第2次大戦という2つの時期の区分が本研究の主たる内容となるという方針を固める。 また、人件費投入により、内閣府「日本帝国統計年鑑」所収の所得税データの他、「文部省年報」所収の教育支出や学童の出席に関するデータ、さらには大蔵省「金融事項参考書」所収のデータのに関するデータベース化を行なっている。データ入力とともに、クロスセクション分析の範囲で計量分析を試行している。ただし、頑健性チェックにより、追加的に入力が必要なデータも判明しているので、早急にデータベース化を進め、分析結果を外部に報告する予定でいる。
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