研究課題
本研究は、インフレ・ターゲティング下での金融政策行動を実証的に明らかにすることを目的としている。21年度まではテイラー・ルール型の政策反応関数を推定してきたが、そこから得られる含意は限定的なものだった。そこで昨年度より、VARモデルを用いてマクロ・ショックを識別し、それらのマクロ・ショックに対する政策反応を推定するという分析手法を採用した。具体的には、Sign-Restrictions VARの手法を用いて需要ショック・供給ショック・金融政策ショックを識別し、インフレ・ターゲティングを採用しているオーストラリア・カナダ・イギリス・ニュージーランド・スウェーデンの5カ国の中央銀行が各種のマクロ・ショックに対して政策金利をどのように反応させているかを検証した。本年度はこの昨年度の分析をさらに発展させ、生産・物価・政策金利に加えて石油価格もVARに導入しより現実を捉えたSign-Restrictions VARモデルを構築・推定した。また、インフレ・ターゲティングを採用していない米国の政策反応も推定し、インフレ・ターゲティング採用国と比較した。その結果、4変数VARでも昨年と同様の結果が得られ結果の頑健性を示すことができた。すなわち、物価の安定と景気の安定の2つの目標間にトレード・オフを生じさせる供給ショック(および石油価格ショック)に対して、たとえインフレ・ターゲティングを導入していても厳格に物価の安定を追求するような政策反応をするのではなく、景気の安定に対しても配慮するような政策反応を行っていることが明らかになった。また、インフレ・ターゲティングを採用していない米国と比較した場合には、インフレ・ターゲティングを採用している国は僅かな差ではあるが物価の安定をより重視した政策対応をしていることも確認できた。この研究成果を論文にまとめ、日本金融学会2011年度秋季大会および第4回バブル・金融危機研究会(神戸大学)で報告した。また、日本経済学会2012年度春季大会での報告と学術雑誌への投稿も予定している。
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Discussion Paper New Series (School of Economics, Osaka Prefecture University)
巻: No.2012-1 ページ: 1-25