研究課題
本研究では、日本における情報セキュリティに対する脅威の経済・経営に与えるインパクトを定性的のみならず定量的に分析し、経済活動を安心して行うことができるために必要とされる情報セキュリティ対策、また政府として取るべき政策は何であるかを具体的に提示することを目的としている。本年度は、まず、迷惑メールの経済・社会へ与えるインパクトに関する経済分析を行った。その結果、日本全体で、2006年において約2億時間の労働時間の損失と約9800億円のGDP損失が生じていたと試算している。また、産業別に見て不動産業が最もGDP損失が大きくなっていることを明らかにしている。次に、企業の情報セキユリティ対策について分析した結果、技術的対策よりもマネジメント対策、とりわけ情報セキュリティ教育や情報共有といったことが重要であることを明らかにしている。そして、各企業がそれらを実施できるように、政府はビジネス環境の整備・サポート(例えば、ISMSなどの認証制度の制度充実)を推進する必要性について指摘している。さらに、労働者を対象とした情報セキュリティおよびその対策への意識に関するWebアンケート調査を実施した(サンプルサイズは600である)。この調査では、労働者の情報セキュリティ対策への評価、労働者の情報セキュリティ意識、情報セキュリティインシデント被害に遭遇している労働者の割合や労働者の絶対的危険回避度などについて質問している。そして、それらの集計結果を用いて労働者の情報セキュリティに対する意識について分散分析を行っている。その結果、企業の効率的な情報セキュリティ対策につながるモチベーションを持たせる企業システム(権限移譲、ストックオプションなど)の導入・充実や情報セキュリティ教育の充実の必要性について指摘している。
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