本研究の目的は、物流ネットワークおよび施設立地を考慮した空間的応用一般均衡(Spatial Computable General Equilibrium : SCGE)モデルを構築することで、交通施設整備や政策変更によるインパクト分析を行うことである。具体的には、多地域間応用一般均衡(Multi-interregional Computable General Equilibrium : MCGE)モデルに、空間価格均衡(Spatial Price Equilibrium : SPE)モデルを適用したハイブリットSCGEモデルの開発を行う。すなわち、地域間での交易条件に空間価格メカニズムを導入することで、輸送費用最小化による均衡物流ネットワークを達成するモデル構築を行うことである。 本年度は、SCGEモデル、特に交通分野に着目した先行研究、および日本を対象地域としたCGEモデル分析に関する先行研究のレビュー、さらに多地域間モデル構築に向けてデータ利用可能性を議論し、関連するデータ収集および多地域間SAMの作成を進めた。さらに、以下の2つの研究成果が得られた。1つは、制度部門、特に一般政府部門の金銭的やり取りを詳細に記述した地域間SAM(CGEモデルの基礎データ)を作成し、制度部門を通じた地域間波及メカニズムの差異を構造パス分析によって明らかにした。もう1つは、荷主レベルの国内貨物輸送データを用いた離散選択モデルによる輸送経路・手段選択分析および製品の搬出・搬入費用、いわゆる物流アクセシビリティを考慮した生産関数推計による生産性改善効果分析を行い、要因変化による各種弾力性値を議論した。
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