本研究の目的は、物流ネットワークおよび施設立地を考慮した空間的応用一般均衡(Spatial Computable General Equilibrium : SCGE)モデルを構築することで、交通施設整備や政策変更によるインパクト分析を行うことである。具体的には、多地域間応用一般均衡(Multi-interregional Computable General Equilibrium : MCGE)モデルに、空間価格均衡(Spatial Price Equilibrium : SPE)モデルを適用したハイブリットSCGEモデルの開発を行う。すなわち、地域間での交易条件に空間価格メカニズムを導入することで、輸送費用最小化による均衡物流ネットワークを達成するモデル構築を行うことである。 本年度は、主に以下の3つの研究を行った。第一は、昨年度に引き続き製品の搬出・搬入費用、いわゆる物流アクセシビリティを考慮した生産関数推計による生産性改善効果分析で、さらに対象データベースの拡張を行い、要因変化による各種弾力性値のパネル分析を行った。第二は、物流ネットワーク、特に地域経済成長や生産拠点立地を含めたグローバル・サプライチェーンの議論で重要な海上コンテナ貨物輸送に着目し、時系列データを用いてアジア地域の港湾物流構造変化を議論した。最後は、こうした輸送費削減やサプライチェーン再編が地域経済に与える影響のシミュレーション分析に適用可能な空間的CGEモデルの構築に向けて、簡素化した部門構成でのSCGEモデルの検討を行った。
|