近年、マイクロクレジット機関が貧困層にマイクロ保険を提供し始めているが、その参加率が上昇しない原因として確率評価、およびインフォーマル保険の役割に注目し、それらがどれほど参加率に影響を与えうるかを検証するために、ベトナムでのラボ形式のフィールド実験を行った。確率評価に関しては、利得と損失に関する確率評価が違う可能性に着目したデザインの実験を行った。具体的には、利益があるか0であるかの場合の保険重要と、利益が0かマイナスである場合の保険需要を調べる実験を行った。プロスペクト理論では、人々は損失に関してはリスク愛好的な選択をする、ということが提示されているが、健康保険など多くの保険は、損失をカバーするものであるため、人々は損失の領域で評価をすることになる。よって損失に対してリスク愛好的であれば、人々は保険を買うインセンティブがないことになる。この問題を明らかにするため、利益か損失かというフレームを入れた場合の保険購買行動を調べる実験を行った。また、人々は、フォーマルな保険がなくても、何か困ったことがあったらお互いに助け合うというインフォーマルな保険を長期的関係のある人々と形成している可能性があり、このインフォーマルな保険の効率性によっては、あえて保険料を払って保険に加入するインセンティブがないかもしれない。そこで、繰り返しゲームで人々の間に助け合う動機があるような状況を実験で設定し、人々がどの程度保険を購入するかを検討する実験を行った。今後、このデータをもとに今後分析を行っていく。
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