研究概要 |
平成20年度は2つの研究課題に取り組んだ. 第1の課題は, 環境政策の政治経済分析である. これまでの研究では, 分析の単純化のため物的資本, 環境資本といった状態変数を捨象しているため, 政策の政治的決定過程が時間を通じて環境水準にどのような影響をもたらすかについて十分に分析されていなかった。本研究では, 環境資本蓄積を考慮したモデルを立て, マルコフ戦略を採用して均衡の絞り込しみをおこなうことでモデルの予測性を高める研究をおこなった. この拡張分析によって, 環境政策の政治決定が環境水準に時間を通じてどのような影響を与えるかを明らかにした. 研究結果は, The politiocal economy of environmental and social security policies : the role of environmental lobbyingというタイトルの論文にまとめ, 現在学術雑誌に投稿中である. 第2の課題は, 社会保障政策の政治経済分析である. これまでの研究では, 年金に代表されるような世代間の再配分に関する利害対立に焦点があてられてきた. しかし, 年金には貢献に応じた給付(ビスマルク方式)と貢献とは独立の給付(ビバレッジ方式)があり, 後者の方式は, 低所得者から高所得者への世代内所得再配分をもたらす. 第2の課題では, 2つの利害対立を組み込んだ理論モデルを構築し, その経済的帰結について検討した. 研究結果は, Aging, inequality and social securityというタイトルの論文にまとめ, 現在学術雑誌に投稿中である.
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