本研究の目的は国際租税政策について内定的手番決定モデルに基づき分析することである。所与とされる事が多かった戦略決定のタイミング、つまり、戦略は同時決定されるのか、あるいは、逐次決定されるのか、も分析対象とする内生的手番決定モデルは、ゲーム理論の分野では盛に研究されている。公共経済学の分野で扱う課題に本モデルを応用することは、現実の政策決定プロセスを考えると、非常に有益でその範囲も広いと考えられるが、これまで国内外を通じて研究実績は殆どなかった。そこで、本研究ではこの応用例の一つとしてこれまで中心的に分析を進め、かつ、経済のグローバル化に伴い特に関心が高まっている国際租税政策について内定的手番決定モデルに基づき分析した。具体的な本年度の研究活動として(1)基礎調査の実施とその結果の整理、(2) 外国性額控除制度に関する理論分析、(3) 国際学会での成果報告と国外学術雑誌への投稿を計画していた。まず、(1)については学内外で図書・統計資料の収集を行い、その分析から国際税制の実態や研究動向をまとめた。次に(2)については国際二重課税の調整方法の中で古典的研究では最良とされ日本をはじめ多くの国が採用している外国税額控除制度の下での租税競争を、内生的手番決定モデルに基づき分析した結果、ホーム国が先導者、ホスト国が追随者という戦略決定の手番が内生的に決定され、特にホスト国の経済厚生は最大になるという帰結を得た。さらに、(3)については、本年度の研究成果を2008年7月18日にシンガポールで開催されたFar Eastem and South AsianMeeting of Econometric Societyで報告を行い、そこで得た本研究に対するコメントを基に改訂を行い国際学術雑誌に投稿した。
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