国際的二重課税を調整する方法には、外国税額は居住地国の算出税額から控除される外国税額控除方式(Credit Method)、居住地国の課税所得から必要経費として外国の課税額が控除される外国税額免除方式(Deduction Method)、国外所得は課税されない国外所得免除方式(Exemption Method)がある。他方、所与とされることが多かった戦略決定のタイミング、つまり、戦略は同時決定されるのか、あるいは、逐次決定されるのか、も分析対象とする内生的手番決定モデルは、ゲーム理論の分野では盛に研究されている。公共経済学の分野で扱う課題に本モデルを応用することは、現実の政策決定を考えると、非常に有益でその範囲も広いと考えられるが、これまで国内外を通じて研究実績は殆どなかった。そこで、本研究では国際的二重課税の調整方法の比較を、内定的手番決定モデルに基づき行っている。具体的な本年度の研究活動としては、Bond and Samuelson (1989 Economic Journal)では最良とされ国内法の規定がある外国税額免除方式(Deduction Method)、アルゼンチンやブラジル等が採用する国外所得免除方式(Exemption Method)、Ida (2006 Review of Urban and Regional Development Studies)では最良とされた未調整方式(No Allowance Method)の下での租税競争に関する分析を計画していた。この研究成果の一つとして、Deduction Methodが伴う均衡では、ホーム国とホスト国の両国が戦略的決定を同時に行い、どちらか一国はCredit Methodと比べて経済厚生が上昇するというBond and Samuelsonとは異なる帰結を得た。
|