本研究では、都道府県立ミュージアムに焦点を当て、包括的に施設運営の効率性を評価する指標について検討してきた。具体的には、Network DEAモデルを用いて、短期・中期・長期の効果を含められるような評価指標の構築を模索した。とりわけ、短期のミュージアム来館者が中長期的なリピーターになったり、館内のボランティア活動に参加したり、賛助会員になったりするような入れ子型のモデルを組むことで、より現実的なモデルになるよう工夫した。また、ミュージアムの立地特性となるような定住人口や交流人口などを制御不能変数として組み入れた。モデル構築にあたっては、先進的に美術館の評価を行っている自治体等を訪れ、現状との乖離がないか聞き取り調査を行った。さらに、学会や研究会などでも積極的に報告し、多くの助言を頂いた。 これまで、公的施設等は採算がとれないことが当たり前とされてきた。しかし、財政逼迫下において、そうした施設は改廃すべきとの意見も聞かれる。しかし、「公的施設の効率性」という定義の精緻化を行い、民間で用いる効率性とは異なる指標で計ったならば、それらの施設も効率的であると評価されるかもしれない。とりわけ「文化は数字で計れない」と言われてきたが、ミュージアムが立地することによる地域に及ぼす影響は非常に大きい。それゆえ、敢えてその効果を数値化することは必要であると考える。
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