研究概要 |
Barro(1993)タイプの内生的経済成長モデルにWilson(2005)タイプの財政競争モデルを導入し、財政制度の違い(分権化された財政制度vs集権化された財政制度)が経済成長に及ぼす影響についての分析を行った。具体的には、税率は選挙により選ばれた政治家が決定するが、集められた税収の支出配分は(部分的に)利己的な官僚が決定するWilson(2005)タイプの租税競争モデルを採用し、各地域の税率や税収の支出配分の決定権限を各地域政府が保有する「分権化された財政制度」と、それらの決定権限を中央政府が保有する「集権化された財政制度」のもとでの経済成長を比較した。その結果、官僚の利己的な度合いが強いほど、若年層の政治的な力が弱いほど、「分権化された財政制度」のもとでの経済成長が「集権化された財政制度」のもとでの経済成長を上回ることが示された。Wilson(2005)タイプのモデルでは、官僚の利己的な度合いが強いほど、若年層の政治的なカが弱いほど、無駄な政府支出が発生しやすい。そのため分権化により地域間支出競争を促し、官僚を規律づけることのメリットが、分権化による地域間租税競争を通じ生まれる資源配分の歪みを上回るからである。さらに経済成長を最大化する財政制度が住民厚生も最大化することが示された。この研究はDiscussion Paper, Fiscal competition, Decentralization, Leviathan and Growthとしてまとめられた。
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