資本自由化(資本規制)と為替制度の政策選択問題は、国際経済学(特に国際金融)において、最も重要なトピックの一つであり、過去十数年間研究されてきた。そしてこのトピックは、現在、1990年代から2000年代はじめの一連の通貨危機により、学界、各国の政策当局者により、より議論されるようになってきた。国際的資本移動が活発に行われている現在において、安定的かつ持続可能な経済成長を達成するためには、各国は資本自由化(資本規制)とどのような為替制度を採用すれば良いのであろうか。本研究の目的は、ミクロ計量経済学によるパネルデータ分析を応用して、資本自由化政策と為替制度の経済パフォーマンスへの影響を分析することである。 そこで、平成20年度では、主にデータの整備と分析手法の開発を行った。そして、為替制度と通貨危機発生の関係について実証分析を行った。具体的には、資本自由化(規制)データと為替制度のデータの組合せを用いて、資本自由化(規制)の下における為替制度と通貨危機の発生に統計的に有意な関係があるのかを検証した。分析結果によれば、第一に、実際の為替制度データを用いた場合、固定相場制が変動相場制に比べて、通貨危機発生確率を統計的に有意に低下させていた。第二に、資本自由化(規制)と為替制度の組合せを考慮した分析においては、金融政策の自由度がなく、規律が最も厳しい制度である資本自由化の下での固定相場制が他の制度に比べて通貨危機発生確率を統計的に有意に低下させていた。
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