研究課題
資本自由化(資本規制)と為替制度の政策選択問題は、国際経済学において、最も重要なトピックの一つであり、過去十数年間研究されてきた。そしてこのトピックは、現在、1990年代から2000年代の一連の通貨危機により、学界、各国の政策当局者により、より議論されるようになってきた。国際的資本移動が活発に行われている現在において、各国は資本自由化(資本規制)とどのような為替制度を採用すれば良いのであろうか。本研究の目的は、ミクロ計量経済学の分析手法を用いて、資本自由化と為替制度の政策評価分析を行うことである。そこで、前年度で行ったデータの整備と分析手法の研究を踏まえて、平成21年度では実際の為替制度の通貨危機発生への影響の分析を行った。本研究の特徴は、第一に、為替制度から通貨危機への因果性を分析するために、逆因果性の問題を明確に考慮して分析している点である。第二に、制度選択のセレクション・バイアスによる内生性の問題を明確に考慮して分析している点である。セレクション・バイアスを除去するために、ミクロ計量経済学のプログラム評価分析で最近発展している分析手法であるpropensity score matching法を用いて分析した。分析結果によれば、第一に、実際の為替制度データを用いた場合、変動相場制に比べて、固定相場制を採用することにより、通貨危機発生確率を統計的に有意に低下させていた。第二に、金融政策の自由度がなく、規律が最も厳しい制度である資本自由化の下での固定相場制が他の制度に比べて、通貨危機発生確率を統計的に有意に低下させていた。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)
Kobe City University of Foreign Studies Working Paper Series No.36
Journal of International Financial Markets, Institutions and Money 20
ページ: 91-108
Journal of Banking and Finance 34
ページ: 1109-1128