本年度は、税制と社会保障に関する動学的一般均衡モデルを構築し、シミュレーション分析を行うことで政策を評価する研究をいくつかまとめた。現金給付の世代間所得再分配である児童手当と公的年金に着目し、税財源の選択によって、子どもを持つか否かの選択や動学的な経済厚生が変わることを示した。さらに、このモデルに対して移民受け入れの経済効果を導入し、どのような種類の移民政策が、経済厚生にとって望ましいのかについて分析した。また、税財源として重要な法人課税に関し、法人所得税と設備投資の関連を個別企業の資本コストによってとらえた設備投資関数から法人所得税の限界実効税率の分布を業主ごとに推計することで、法人所得税を歴史的に評価する研究論文を公刊した。この論文は査読雑誌に掲載された。続いて、法人課税に関する研究の派生として、地方の法人課税である法人住民税の性格について考察した論文をまとめた。さらに、財政悪化と少子高齢化が進展するなか、財政の財源としては、消費税を含めた間接税が重要になっているが、本年度では所得階級別の間接税負担を推計した研究をまとめ、日本財政学会にて報告を行った。ここでの間接税負担とは、消費税のみならず、個別間接税を含むものであり、個別間接税を含めた逆進性について考察している。以上のような税制と社会保障に関わる研究成果をもとに、社会保障と財源に関する論考をいくつかまとめた。なお、直接的に税制と社会保障制度とは関連性は薄いものの、空港政策に関する研究を続けており、本年度にいくつかの論文をまとめた。また、本年度に公共経済学の入門書を公刊した。
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