本研究は、(1)西アフリカという途上国地域で最近活発化してきた通貨圏創設に向けた動きが、各国の経済成長に本当に貢献するのか、(2)現実に通貨統合する際、アンカー通貨の選択を含め、どういった制度作りをしていくべきか、というテーマを検証する。今年度は、平成20年度10月以降より取得した研究休暇(受け入れ先 : パリ第一大学)を利用し、パリ経済研究所(La Maison des Sciences Economiques)でのセミナー参加や、アフリカ開発銀行(チュニス)訪問を通して、同分野の研究者と意見交流を図るとともに、実証分析に必要なデータの収集を行った。 具体的には、西アフリカ全体で共通通貨圏を創設することが最適であるかどうかを、一般化購買力平価モデルを使用して実証分析した。各国実質為替レートを用いた多変量共和分分析を行ったところ、西アフリカを二分する、既存のCFAフラン圏と創設途中の西アフリカ通貨圏(WAMZ)は、別々であるとの条件下では、それぞれ最適通貨圏といえるが、この二つの通貨圏をまとめた全体通貨圏は最適通貨圏とはいえないとの結果が導出された。 アンカー通貨をユーロにするかドルにするかの選択問題を考慮し、アンカー通貨の相対ウェイトを導出可能なモデルで再度検討したところ、CFAフラン圏とWAMZにとって、それぞれが最適通貨圏を形成するために必要とされるウェイトは大きく異なることが示された。したがって、上の結果から、現段階では、西アフリカ全体で維持可能な共通通貨圏を創設することは難しいという政策的インプリケーションを導出した。
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